CARV STORE TOKYO

CARV STOREは店名にも採用した“CARV=曲線”をコンセプトに掲げ、国内外の個性派ブランドのアパレルを中心に、フレグランスやワインなども取り扱うセレクトショップだ。

「CARV(曲線)=個性」として捉え、
「フリーハンドで書いた曲線は、二度と同じものが書けない」というように、「個性や、多様性を表現したショップ」にしていきたいという裏テーマがある。

私たちは、ブランドのコンセプトでもある「CARV=曲線」を多角的に探ることから始めた。
例えば…、曲がる、ねじる、ひねる、歪む、膨らむ、潰す、弾む、撓ませる…など、言葉をどんどん派生させることで、動作や物体の動きやはたらきを頭の中にイメージすることに繋げる。

また、物理的意図的に曲げる、自然現象によって曲がる、化学的に曲がるなどの現象や効果を検証する手段を得ることに繋がった。

これらのイメージや検証結果を具現化し、多角的に表現した曲線を一つの空間の中に集約させた。

1:丸型のアクリパイプや歪みのあるガラスブロックを店内に計画した。
アクリルパイプやガラスブロックを通して見た空間や商品は見事に歪み、空間を曲げることに成功した。

2:什器やガラス棚、仕上げにも曲線を用いた。
什器形状やガラス棚の形状はもちろん、研磨機を使用した仕上げや鏡面仕上げを用いることで、視覚的にも曲線を表現し、什器に映り込む世界も曲げた。

3:フリーハンドで描かれたハンガーラック。
アイフォンライトを使用し、店内に曲線を描き、その線を具現化したハンガーラックを製作した。
ハンガーラックは職人の手作業で一つ一つ製作され、表情、質感、感触を空間に加えることに繋がった。

4:ワイヤーを使用した陳列や照明レイアウト。
シーズンなどにより商品の数や重量も変わり、空間に描かれるワイヤーの曲線が変化する。
洋服を掛けたり、手に取るごとにワイヤーと心は弾む。

5:石材工場から捨てられてしまう端材、廃材の石を調達し、店内の陳列棚やワイヤーラックのオモリなどに変換した。
端材、廃材には、意図しない偶発的な曲線形状が含まれており、それらの偶発的な曲線を店内に持ち込むことで、空間内のアクセントになっている。

6:自然現象による曲線を取り入れる。
店内のレジカウンターには、真鍮に対してサビ加工を施している。
一定期間サビを進行させ、曲線が描かれたところで、クリア塗装を施し、サビの進行を止めている。
サビは自然現象が生み出す曲線であり、人工的になりがちな建築空間内に自然的要素を加えている。

7:重力で曲げる、撓ませる。
什器の天板部分に伸縮性や耐久性に富んだPVCコードを用いた。
商品の重みによってPVCコードは沈み、曲線を描く。

8:発想を曲げる、発想のひねり
硬質な見た目に対して触るとやわらかいというギャップがユニークな素材を使用した什器に加え、一見重量感を感じる什器を宙に浮かせて使用しており、良い意味で期待を裏切り来店者の表情も曲げた。
また店内のアート作品には、ショップコンセプトとの親和性が感じられるシャルルムンカ氏のペンや鉛筆などの「試し書き」として他人が残した線、文字や記号、絵などのモチーフをもとに作られた作品が飾ざられる。

9:過去に想像を膨らませる
店内には、過去に行われた工事の墨出し跡や筆跡、溶接跡などが残っているが、それらは過去の物語や建物の歴史を想像することができる1つの個性として捉え、空間のデザインとしてそのまま残す選択をおこなった。

これらを空間内に落とし込むことで、同じ個性がない独自の世界観を構築している。
代官山は1900年代から2000年代前半まで盛り上がりを見せた後、一時下火になるが、新しいセレクトショップが生まれることで、新たなカルチャーが生まれ代官山が上昇曲線を描くことは間違いない。