GALERIE ANNE ANNEX 2F

SPACE:270.483㎡

135年の歴史を持つアンネ松本が運営するギャラリーアンネアネックスの建て替えプロジェクト。

西鉄久留米駅のすぐ西側に位置する7つの商店街で構成されるほとめき商店街の1つ、一番商店街の中にある。

建て替え前はアパレルを中心としたセレクトショップだったが、今回の建て替えを機に、セレクトショップに加えて、地域性や顧客層を踏まえ、料理教室が可能なキッチンスペースとヨガなどが行えるスタジオ機能や、フォトススタジオ、レンタルスペースが入った4フロアの複合施設となった。また、本計画中に隣接店舗が閉業したため、その土地も買い上げた。新たに加えれた土地はフレキシブルかつOPENな計画とすることで、各店のファサードがひしめきあう商店街の通りの中で、空が望める開放的な場所が生まれた。今後、さまざまなイベントが計画されており、新しい繋がりが生まれ、コミュニティが集う場所になることを目指している。

本件が所在する福岡県久留米市は、九州最大の河川である筑後川が流れ、その沖積作用によってできた自然豊かな筑後平野が広がる。

また筑後川流域の発展により下流は港が繁栄し、一大物流拠点として縄文時代から歴史が残る地域である。

そのような独自の地域性や、歴史背景を元に1Fと2Fのショップ空間では、筑後川や筑後平野を見立てた空間構成を意識している。

フロアをつなぐ象徴的な階段では、曲線を多用し、垂直方向に上流(2F)から中流(1.5F)、そして下流(1F)へと川の水が流れるような繋がりをつくった。

その各階の流域には、平野に見立てた大きな売り場が広がり、スムーズな回遊導線と、1Fと2Fへの誘導を生み出し、水平方向にも流れを生み出している。

地域の文脈や、歴史背景を読み解くことは、プランを計画する上でのベースとなり、

その土地特有の魅力(オリジナル性)として、一過性ではなく、耐久性のあるデザインとなるだろう。

また、ギャラリーアンネアネックスは久留米駅前のシャッター通りと化した一番商店街の中心地に位置している。その商店街と並行して走る池町川は、約40年ほど前に流域の都市化に伴い水質がひどく悪化したため、水質改善を図るために、筑後川から揚水ポンプにより導水され水質が改善された過去がある。

ギャラリーアンネアネックスが商店街における揚水ポンプの役割を担い、商店街に良い流れを再び呼び起こすきっかけとなればと願う。

1つの建築物が竣工して完成ではなく、その建築物から生まれる場や繋がり、試み、発見が周りに波及し、まるで良質な水常に流続けることで、その流域が発展し、新しい水脈や、繋がりが生まれるように、新しい商店街の景色が作られていくだろう。

PHOT BY KENTA HASEGAWA