MAISON SPECIAL NAGOYA

SPACE:271.911㎡

メゾンスペシャルのブランドコンセプトである「SPECIAL を、STANDARD に」を再解釈し、当たり前に過ごしている日常に疑問を投げかけ、日常(STANDARD)の中にある非日常(SPECIAL)を覗かせることをインテリアコンセプトに空間を構築した。

「非日常を感じさせる空間」を構築する上で、空間のコンセプトとして大きく2つのテーマを課すと同時に、テナントの形の条件=細長いウナギの寝所的な空間をどのように売り場として攻略するか試された。

まずコンセプトの1つ目として、名古屋という土地柄の再解釈をおこなった。

名古屋(中部地方_尾張)は東西南北をつなぐ日本の中心にあたり、 様々な人やモノが集まる物流の中心という歴史がある。

その歴史背景に基づいて様々な素材や様式、色を用いた空間を創出した。

マテリアルについても、数(種類)、面積(量)、時間(新材や古材、または端材や廃材を使用)、距離(国内外の生産地から取り入れる)、出自(天然物、人工物、職人により生成された素材)など、さまざまな軸から検証を行い、普段の生活では感じられない、多様な素材のテクスチャ、パターン、色を一度に目にする状況を作り出している。

店内を渡り歩くたびに素材を浴びるような高揚感を感じることが出来る。

2つ目に、錯覚と違和感を感じさせること。

床のタイルが隆起して什器になった空間、

ミラーをジグザグに連続して配置された空間、

タイル柄を施したカーペットの床が広がる空間、

異素材のオレンジのみで構成され空間など、エリアごとに素材や形の使い方で錯覚や違和感を与えるような仕掛けを施した。

加えて、空間のXY軸方向に6つのエリア分けを行うと同時に、Z軸方向にも空間を変容させる仕掛けとしてエリア毎に微細にフロアレベルを変えている。その微細な差により、扉がなくとも次の空間に足を踏み入れている感覚を演出している。次の空間へ、次の空間へと心理的に誘い込み、客の足を奥に運ばせることにも成功し、長いウナギの寝所的空間を攻略することにも繋がった。

また、部屋を構成する床・壁・天井の概念や要素を分解し組み立て直した。

床だけ、または壁だけが物体として存在すれは部屋として認識されるのか、または天井が存在すれば部屋として認識されるのかなど、エリア単体だけでなく、エリア同士の関係及び空間全体が来店者に空間認識について問いかけている。

来店者には、ショップの空間がもたらす日常では感じられない感覚や空間認識の新しい視点を通してブランドの世界観を体感して欲しい。

 PHOTO BY KENTA HASEGAWA