PRANK PROJECT AOYAMA 2ND FLOOR

SPACE:133.920㎡

本物件は、1999年にレストランとして計画された商業ビルであり、本プロジェクトに至るまでに数回の改装が行われている。

私たちは、ブランドのコンセプトワードである、PRANK(いたずら)という言葉に込められた遊び心からデザインの発想を探ることを考えた。

前テナントの解体が進む中で、あるはずの壁が破壊されていたり、窓を構造から切り離すためにコンクリート造の壁には亀裂が生じていたりなど、予期しない建築部分が多数現れた。

そこで、私たちは、建物の分脈を読み解きつつ、建築要素を1つ1つ分解し、

当時の設計上、(構造上問題がなかったことからも)それらは不要な壁や窓であったと判断され、破壊または切り離されたことが分かった。

当時、不要なモノやコトと判断され、破壊された部分をキレイに修復するのではなく、そのままの不完全な状態を許容することで、現代のPRANK(いたずらという言葉に込められた遊び心)が生まれるのではないかと考えた。

そのため、スクラップ&ビルドの考え方とは違うアプローチとして、解体の部分からデザインプロセスとして捉え、机上の提案や確認ではなく、解体の全工程に足を運び、解体範囲の判断を現場で全て行った。それらは結果的に解体時に生じる廃棄物を減らし、無駄な製作物を作ることを無くすことにも繋がったと考えている。

建物が持つ物語を読み解き、PRANKの視点を持って空間と向き合い、残すべきものと加えるべき必要な要素の組み合わせやバランスを熟考し、オリジナルの空間をつくり上げる。

例えば、破壊された壁で構成された空間には、特徴的な木目を有したウォルナットのR壁や床にはタイルを設たり、躯体が剥き出しの階段には上質なカーペットを設てみたり、

元々レストランであった厨房内の配膳用エレベーター部分を棚にし、元々厨房だった場所に売り場としての機能を設たりなど…。

既存のステレオタイプから開放され、相反するモノを共存させたり、不完全さやアクシデント的な事柄までもを受け入れ、そこに柔軟な発想を加えることで、PRANKな空間へとつながる。

また、その考え方は、建築や空間だけでなく、家具や什器にも当てはめることが出来るのではないかと思う。

店内に置かれる家具は、いづれも20世紀を代表的なスーパーデザイナーたちがデザインした家具たちで、現代では名作家具と呼ばれているが、さまざま事柄や出来事をきっかけに当初は遊び心ある発想から生まれた家具たちかもしれない。

遊び心から生まれたアイデアやプロダクトが、時を経ることで、モノの捉え方や視点の変化があり、確かな価値へと変容することがある。

時代によってPRANK と感じるものも変わっていくだろうし、PRANKという言葉自体の価値も変わっていくかもしれない。

PRANKを感じる空間に、現代を象徴する様なコンテンポラリーなデザイン家具や什器と、名作家具の両方を置く事で、発想が価値に昇華していくストーリーを込める。

PHOTO BY KENTA HASEGAWA