PRANK PROJECT は「意外性」と「品の良さ」をミックスした「MIX MATCH ELEGANCE」を提案する、
大人の女性に向けたNEW MODE BRANDである。2023年に誕生したブランドであり、大阪エリアには初出店となる。
私たちは、ブランドのコンセプトワードである、PRANK(いたずら)という言葉に込められた遊び心からデザインの発想を探ることを考えた。
本プロジェクトは、心斎橋のメイン通りである御堂筋通りから1本入った、佐野屋橋筋通りに位置する。
南堀江やアメリカ村、道頓堀と言った、大阪を支える商業エリアからもほど近く、ひと通りや屋外広告物も非常に多く、活気ある街並みが形成されている。
それゆえに心斎橋商業地域のファサードにおけるデザインレギュレーションは非常に厳しく、
それに加えて、店内は約70㎡と決して広いとは言えないスペースではあるが、売り場としての必要機能を網羅しつつ、ファサードのデザインでは最大限のインパクトを与えることが、クライアントからは求められた。
そこで私たちは、大阪区役所に幾度となく足を運び、協議を行った。
建築面積が増えてしまう壁や柱の構築が不可の中、建築壁から1m以内であれば建築面積にカウントされない「庇」を活用し、ファサード形状を構築するアイデアに辿り着いた。
PRANK(いたずら)という言葉に込められた遊び心からデザインの発想を行い、いくつかのイタズラを計画した。
そのうちの1つに、テナントが入る建築1F部分を白い壁で全て覆い隠してしまった。
ひと通りや屋外広告物が非常に多い繁華街の中で、あえて「閉じたファサード計画」を行い、
繁華街内に「余白が生まれる」ことで、逆に印象に残るという提案である。
日中は白い壁に自然光が反射し、夜間はスリット部から光が漏れる計画となっている。
水平垂直の構造物の中に1箇所だけ、角度のついた壁を計画することで、光の反射や影の落ち方など見る角度によって白壁部分にも変化や表情が現れることも狙っている。
外壁はショーウィンドウとスリット部のみの必要最小限の開口とし、店内を見えにくくすることで、外を歩く人は好奇心がそそられ(隠されると見たくなる人の心理効果)、
また店内では外部からの余計な情報が遮断されるため、ブランドの世界観を体感しながらショッピングに没頭できる空間となっている。
通常の路面店あれば、大きな開口を設け、外光を取り込み、外からでも店内の賑わいが伺えるようなOPENな計画を行うようなステレオタイプ的な発想ではなく、
心斎橋商業地域の特性を理解しつつ、厳しいレギュレーションをクリアするために何度もした熟考した逆転の発想により、より強いインパクトを残すことに成功した好例と言える。
既存の状態を出来るだけ許容し、もともとあるモノをできるだけそのままに、箱が持つポテンシャルを最大限に活かし、どれだけ新しい視点や価値を見出し、魅力的な空間をつくれるかということを熟考した。
天井は既存のままスケルトンとし、壁は作る部分と作らない部分(スケルトン部分)の全体バランスを考慮しながら、造作物を最低限におさめることで資材の量を抑えることにも繋がっている。
また、カーペットや塗料は環境に配慮したエコ素材を使用し、店内に置かれた黒いスツールは、地域で危険樹木として伐採され放置された木材などを使用した家具である。
店舗は、商品を売るだけでなく、コンセプトを体現し、来店者に何かのメッセージを伝えることが大切である。
ちょっとした遊び心から生まれたアイデアやプロダクトが、時を経ることで、モノの捉え方や視点の変化があり、新たな気づきや確かな価値へと変容することがある。